未設定製本奮闘記
本、作りました。
これは、不肖未設定による、wordとの戦いの記録である。
まえがき
ある同人誌即売会に一般参加して、他の方々が作った本を手にとってから、自分の中で「本を作りたい!」という欲がむくむくと湧き上がっていました。
しかし、作品がありません。
虚空の旅人は製本するにしても第一部完してない上に一度大々的に手直ししたいし、水葬はサウンドノベルにしたいと考えていました。
でも作りたい。
そこで、サイトの四周年記念的なアレで一冊だけ作ることにしました。
いくつかの一冊から可能な印刷屋さんを比べて、安くて評判も悪くない製本直送.comさんにお願いすることに。
表紙作成コースに決めたので、作るのは
- 本文のPDF
- 表紙となる画像
の二つです。
ここではじめて知ったのですが、wordから直接出力したPDFデータは印刷に適さないらしいとのこと。
見た目だけは綺麗にできますが、フォント埋め込みが中途半端なので環境で文字化けするそうです。
そこで、wordから仮想プリンタとしてPDF出力するソフト「cubePDF」を導入。これは製本直送さんのサイトでも使い方が紹介されているので、分かりやすいかと思われます。
表紙の作成はfirealpaca。漫画原稿ガイドを応用しました。製本直送さんの説明以上のことはしていないので、今回は特に説明しません。
使用ソフト一覧
- Microsoft office word 2010
- cubePDF
- firealpaca
あと、直接的にではありませんが、表紙写真の色味の編集でAzpainter2を使いました。
word以外はフリーソフトです。
なお一番面倒だったのはwordです。
wordで本文作成
wordで作る自家製本、というとても勉強になるサイトがあります。
ただ、もうずいぶん昔のサイトなので、使用しているバージョンも2003と古いです。
2007以降は2003とはインターフェースからまるきり違うのでこんがらがることがたびたび。
今回は2010を使用して本文を作っていきます。
あと、筆者は文章レイアウトに関しては素人です。今回使用した数値は手近な本を調べたり何となくで決めたりしています。各自適当なものに差し替えてください。
前提として、wordでは大別して選択範囲ごと、段落ごと、セクションごとの設定があります。
これを意識して作業しないと混乱の元です。
選択範囲ごと
主にフォント。選択しない場合、現在カーソルがある位置から書き始められた文章に適用されます。
段落ごと
字間、行間。インデントなど。段落全体に適応されます。
セクションごと
ページ設定。余白、字数行数など。「ページレイアウト」タブにあります。
なお、ページ設定下部にあるフォントの設定からフォントなどを変更した場合、基本的にそのセクション内のすべてに適用されます。
まず開いたままのページ(A4横書きのアレ)に文章をテキストのみで貼り付け、改ページを入れていきます。画面が広いうちにできる作業は済ませておくと楽です。
ページ区切りは「挿入」タブ、「ページレイアウト」タブどちらにもあります。
ページ設定
終わったら、ページ設定を変更していきます。
フォントなども、必ずページ設定下部のボタンからウィンドウを開いて行ってください。
今回の目標
- A6(文庫サイズ)
- 縦書き
- 右綴じ
フォント
takao明朝 9pt
IPA派生です。どうやらヌケモレもあるらしいですが、今回は特に問題なかったので使用。
とりあえず等幅、truetypeであれば大丈夫じゃないかなと。PDFに変換するとバグるフォントもあるそうなので、その辺りは各自調べて下さい。
また、パソコンに内蔵されているフォントは商用に使えなかったりするらしいので、その辺りもちゃんと確認してください。
あと、大体の印刷に適したフォントではダッシュ、あるいはダーシ(―― ←これ)がくっつきません。これは最後に対応します。
字間
今回は変更しませんでした。詰まりすぎ、あるいは間隔広すぎ、というときには調整してください。
行間
固定値 16pt
段落ダイアログボックスにあります。特にルビを振るなら固定値にしておくべきです。これでルビを振っても行がずれなくなります。
ただしルビの位置はデフォルトだとやけに遠いです。これもまた別の設定が必要になります。
文字数×行数
36字×12行
この辺は字間を見ながら適当に。行間を先に設定しているので、行数は調整しながら様子を見てください。
余白
上15mm
下12mm
右10mm
左10mm
とじしろ10
印刷形式は標準、ヘッダーフッターの奇数/偶数ページは別指定にチェックを入れて下さい。
中表紙
先頭のページの前に空白のページを挿入。セクション区切りを入れて、ページ設定から横書きに変更します。この時勝手に紙の向きまで直してくるので戻します。
セクション区切りを挿入することによって、そのセクションの設定を独立して変えることができるようになります。
奥付を作る時にも便利です。
そのままの行間でサイズ変更すると文字が切れてしまうので、適当に直します。
画像も中央揃えできます。画像を選択した時にだけ表示される「描画ツール 書式」タブから、「配置」→左右中央揃え
ついでに、セクション区切りを利用して詩を引用したページを中央寄せに。
こちらはページ設定から変更できます。
余白やとじしろに関係なく、紙の中央に寄せられるので、そのあたりは調整が必要です。
ノンブル
word上ではページ番号です。
製本直送さん側で特に指定はなかったようなので、中表紙から1ページ扱いで振りました。
とじしろのない側にページ番号を挿入してください。奇数偶数どちらもやれば、wordの方で勝手に全ページ分処理してくれます。
ヘッダー7mm、字サイズは8ptです。なおページ設定から先頭ページは除く、のチェックを入れると一番最初のページは別扱いとなり、表示されません。
段落を詰める
一番手間だった作業、段落を詰める作業です。
wordには、なるべく段落がページをまたがないよう、勝手に次のページに切り替える機能がついているようです。この手の機能はオートコレクト(wordが勝手に自動で行ってくれる機能のこと。文章校正やカッコの対応など)かと思いオプションから開いてみるも、対応した項目がありません。ネットで調べてもちょっと見つかりませんでした。
これ、そのままにしておくと最悪二行分も不必要かつ不自然な空白が発生します。
現時点で筆者が行っている解決策は、段落自体を分割する方法です。
行の一番下にカーソルを合わせ、エンターで段落の切り替えを挿入してください。これで詰めることができます。
外見上は問題ない、はず。
次に細々とした処理をしていきます。
多様している場合は取りこぼしを防ぐために検索をかけてください。
まず半角。
この時点では、!?や半角文字は横に寝ています。
範囲を選択してから、縦中横。
バランスが悪い場合はフォントやサイズを変えてみてください。
次に、ダッシュ。
フォントを変えるのも手ではありますが、今回は字間を詰めることで対応しました。
選択し、フォントダイアログボックス→詳細設定から文字間隔を狭く、間隔を1ptにします。
そうすると繋がるものの、レイアウトがずれてしまいます。文字サイズを12ptまで上げて調整しました。
最後にすべてのページを確認して、wordでの編集作業は終わりとなります。
基本的にwordはお節介との戦いです。オートコレクトは、必要ないものは原則外しておくことをお勧めします。
PDF変換
これに関しては製本直送さんのサイトで詳しい説明がなされているので省きます。
ただ、印刷設定
→詳細設定
→postscriptオプション
→truetypeフォントダウンロードオプション
を、自動をアウトラインに変更しておいてください。
そうしないと、縦書きではレイアウト崩れが発生します。
あと、紙の向きはその都度選択した方がいいです。
自動だとたまに勝手に横向きます。
おまけ
表紙
とにかく「一メートル離れてもタイトルがはっきり読めること」を目安に作成。あとはコントラスト強め。作品の内容としてはもっとダルトーンでも良かったかも。
視認性は重要だと思います。この本配布予定ないけど。
あとは現物が届いてからですね。
楽しみだなあ。